ふなやといえば1627年創業の道後温泉では老舗中の老舗。戦前から皇族がお泊まりになる高級温泉旅館として知られています。

そんなふなやに通い始めたのは4、5年前からです。最初は年に1回程度、家族で日帰りの温泉に浸かった後、ロビーの喫茶コーナーでお茶をして帰っていました。その後はたまに家族の通院後に喫茶を利用したり、私一人でお正月やお盆前など温泉とお茶を楽しむ程度でした。
それが、コロナ禍でとくに2020年前半、市内の日帰り温泉やときどき使っていた喫茶店が休業するケースが増えて困っていたところ、ふなやを思い出したのです。もともと私は週に2〜3回の日帰り温泉と喫茶店でメンタルの安定をしてきました。子供の頃から、「時間」と「空間」で非日常を味わいたいという気持ちが強く、同じような母の感性を受け継いだのだと思います。

ただ、大正生まれの祖父母や苦労人の父にはあまり理解してもらえず、よく「贅沢」といわれていたので、幼い頃からそのあたりの気持ちの整理の付かない感覚を覚えてきました。
守りたい場所への「応援」と、自分を整えるひととき

自粛要請の中、自分をはじめ介護をしている母のメンタルケアも考えて、週に1回だったり、月に2、3回だったり、ふなやを訪れるようになります。お金持ちでも地元の名士でもない私がたまに行ってお昼に日帰り温泉と喫茶を使うのなんて、老舗の高級旅館からすればコロナ禍であっても「焼け石に水」でしょう。
しかし、守り続けるこの空間や流れる時間をこれからも味わいたいという気持ちから、些細であっても応援する気持ちもあって以前に増して利用するようになりました。
夏場はよく、スカッシュを飲んでいました。その爽やかな甘みが気に入り、お土産に売店でハニーシロップを買って、自宅でも炭酸で割って飲んでいたほどです。シロップには柚子、伊予柑、すだち、甘夏と愛媛らしいラインナップがありますが、私のお気に入りは「すだち」。ただ、これは数量限定の喫茶メニューのみで、残念ながら販売はされていません。
一杯の柚子ホットティーが繋いだ、心の通い合い

ある時、喫茶室にいるベテランの女性店員さんとお話しする機会がありました。その流れで「次は柚子ホットティーを試してみますね」と約束をしたのです。
次に訪れた際、約束を思い出し、初めて柚子ホットティーを頼んでみました。あいにくその日は例の店員さんが接客担当ではありませんでしたが、お茶を飲んでいると、ふいに後ろからその店員さんが現れて、
「前にお話しさせていただいたから、頼んでいただいたんですね!」
と笑顔で声を掛けてくれました。
こちらも、小さな一言を覚えていてくださり、わざわざ喜んでくれたその姿に、胸が熱くなりました。
幼い頃、周囲から「贅沢」と片付けられてきた私のこだわり。けれど、ふなやさんで過ごす時間や、こうした店員さんとの温かな交流は、私にとって決して贅沢などではなく、明日を生きるための大切な糧の一つです。これからもこの場所が紡ぐ歴史の端っこに、そっと寄り添っていけたらと思っています。


コメント