広大な田園地帯を八ヶ岳に向かって村役場の近くを通り過ぎると、途端に景色は高原となる。
明るい林の中にペンションが建ち並ぶ。
上り坂の一本道を八ヶ岳を目指して進むと、突き当たりに八ヶ岳美術館があった。
梅雨でも肌寒い高原の美術館
車を降りると、肌寒い風に晒された。
20度あるかどうかわからないぐらいの気温で、春秋のフリースの裏地の付いたブルゾンを着込んでちょうどいい。
原村の中心地は標高900m台。
たった10分ほど車で登っただけで、この一帯は標高1250mまで上がる。
念のため荷物に一枚忍ばせておいて正解だった。
林に浮かぶドーム建築
八ヶ岳美術館は全国的に珍しい村立の博物館。
地元出身の彫刻家・清水多嘉示の作品を多数収蔵展示している。
一方で、縄文文化の花開いた原町から出土した土器や石器なども展示していて、規模のわりに十分楽しめた。
ドーム状の屋根が印象的な建物は建築家・村野藤吾によるものだ。
館内に入って屋根を見上げると、大きな白布が天井を覆っている。
開館は1980年、昭和55年とのことで懐かしい設計である。
地元で古い市民会館や美術館の建物を思い出した。
建物の周りに小径を巡らせいるので、ゆっくり高原の雰囲気を楽しみながら散策するにぴったりだ。
途中、立像がいくつも展示してあるので、飽きることがなかった。
信玄の棒道
駐車場から美術館に続く林の小径で「信玄の棒道」という大きな看板があった。
美術館の敷地内に武田信玄は一瞬面食らいそうになったが、案内を読むと甲斐から諏訪への軍用道路として整備したものだった。
甲斐と諏訪の先には五度の川中島の戦いで有名な越後の長尾景虎(上杉謙信)が控えている。
北の防御を効率よく進めるために、できるだけ真っ直ぐの道を造らせたようだ。
この一帯はもともと諏訪大社上社の神域で「神野(こうや)」と呼ばれる立ち入り禁止だったところを、諏訪を制圧した信玄が棒道を造らせたというのも興味深い。
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