透明なものなどこの世にはなくて
透明なもの
半透明なものも
すべて輪郭が浮かびあがる
輪郭という曲線が直線となり
やがて刃先となって
わたしのこめかみと喉仏に突き刺さるだけ
その、一歩先を理解する人は少ない
一歩手前では無理解と同じだ
銘酒を燗して味わうとき
その、ふくやかな香りは果たして
酒の液体にあるのか、
気体にあるのか
その答えを出さない人が良い
見えないものはすべて美しいのだけれど
この世では息をしていけない
見えるものは、ほとんど醜いのだけれど
あの世から反転しながら転写された戯れの姿
わたしには
ユウレイと
シュウキョウの違いが分からず
にんげんと
くうきの違いだけが
分かる