【詩】白い光を手のひらで持ち続けることができない

白い光 poem

気軽に仲間に誘ってくる人たちが多くて

どうして

閉じられた世界でしか使えない通貨ばかり

溜め込もうとするのか

開かれた白い光の世界との境目は、もう

すっかり消えてしまっているのに

シームレスな世界を求めない人たち

は、じぶんがみえないじぶんを抱えきれなくて

じぶん以外のすべてに委ねてしまおうと

簡単に諦めている

だけだ。

ちいさな暗い世界は閉じられようとしているけれど

はるかむこうに見えるたったひとつの鉄の扉が

しずかに閉じる その寸前で

薄い生地になった人間だけ ひろがりをはかることすらできない

開かれた、白い光の世界に移行することができるようで

仕切りもなく

空気のちがいもなく

地番の差もなく

あちらの世界

に扉を超えてすり抜けることができればそこには

なにもないけれど

見えないすべてものものが圧倒されるエネルギーでそこにただある世界が

広がっていて。わたしは、

生まれたときに持ってきた制服を脱いで

お出かけの形の整った服も脱ぎ捨てて

パジャマも

いまとなっては必要のなくなったコートも

すべて

いつだったのだろう。捨てようとして亡くしたのではなくて

持ち続けよう とか 捨ててしまおう とか

そういうどちらか一方に決めようとする天秤を、

歩き旅の休憩としてほんのちょっとたたずんでいた場所に

置いてこようと決めていない気持ちが本当ではないと知っていても

見て、ただ見て、見ていることをじぶんで理解しながら、それでもただ、

見て。置いてきたのだった。

二階へ続く階段と壁のすき間から

白い光が漏れてくる

もやがかかっていて、きれいなものには見えないけれど

家そのものがきれいでもきたないものでもないので

その、ひかり自体は 世界がどうなっているのか

知らないけれど。

白い光、

閉じられた世界からつながってはいなくて、

ふと両腕を天井に向けて開いてみると

手首のあたりに、アボリジニーの刺青のような

そんなわたしの大脳のはたらきを象った意匠が浮かび上がっている

両手の、

手首の先の手のひらのまんなかを見つめている

すると、さきほど感じたはずの

階段と壁のすき間から漏れてくる白い光が

家のかたちをしてふわふわと宙に。

ふたつになって、家が、両手のひらにひとつずつ

ふたつになって。閉じられた世界、

開かれた世界

そのどちらの、このままありつづけようとそんなことはどうでもいい

そんなふたつのせかいのどちらか、よりも。

わたしの薄れゆく胸の、構成要素とあまりにちかくて

ほっとするより、も

先に、あ。

すべて消えてしまった。

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