もう私は ここから離れなければならない のかもしれない
鏡面の湖水 石ころ一つ 放り投げて
波紋広がる その中央に すっぽり
この身 が 嵌る
もう私は ここから離れるべきなのかも しれない
恋をしてはならぬ 無生物に 心を寄せ
就職先は 学校の教室の机
結婚よりも先に離婚をし
葬式よりも先にお食い初めをする
もう 私は ここから離れてもよい のかも知れない
人を食ったようなロボット
ロボットの顔をしたような虚ろなヒト
車にははねられて あの世にたどり着いても気づかないだろう
自分が生きていたこと
自分が死んだこと
己がただ生まれただけで
生きること それが
始まっていなかったこと を
もう、私は ここから 離れるのだろう
コーヒーよりも生を憎み
蛙よりも涙を尊び
考えることよりも
聞こえることを信ずる
もう私はここから 離れていく
生きるために私は死なない
死ぬために湖を見ない
もう、いい
という文字 心の裏側にへばりついた
白い小石に魂を移し入れて
この身ひとつ
ここから
天使のはしご
その雲間に紛れていく