新潟から金沢へ:現代アートを巡る旅 #5 龍ヶ窪の池

新潟県津南町にある龍ヶ窪(りゅうがくぼ)。

1985年、当時の環境庁「全国名水百選」にも選ばれた新潟を代表する湧水である。

前泊「越後田中温泉 しなの荘」のロビーで見た観光マップで気になり、チェックアウトをしてから直接向かった。

駐車場から散策路を歩く

しなの荘から国道117号線を中津川橋交差点から南下し、道路改良された走りやすい山道を登っていく。

車で10分ほどで龍ヶ窪駐車場に到着した。

平日の朝10時過ぎ、他の車は1台だけだった。

駐車場脇にある「龍ヶ窪の池」の看板から階段を下りていくと、池に向かう散策路の入り口に当たる。

森林浴で癒やされる

山奥感にあふれていて、予期せぬ森林浴。

松山から新潟まで車で走り続けて来た疲労が抜けていくような感覚がした。

途中、水飲み場も現れる。

一口飲んで見たが、癖のないさっぱりとした清水だ。

竜神伝説の看板

散策路の途中、龍ヶ窪神社の手前にある大きな看板に、竜神伝説の解説がびっしりと書かれていた。

昔、このあたりにあった芦ヶ崎村で日照りが続いていた時、ある若者が天上山で昼寝をする龍を見た。

そばにあった卵を見つけた若者は、せめて村の年寄りと子どもにだけでもと卵を盗んで持ち帰り割ってみたところ、龍の子が現れて母龍に助けを求めた。

すると、怒り狂った龍がたちどころに現れて村人を食い殺そうとしたとき、村人が「子どもだけは助けて欲しい」と必死に頼む姿に心を打たれた母龍は、三日三晩雨を降らせ誕生したのが、龍ヶ窪だという。

龍ヶ窪神社

散策路の突き当たりを左に行くと、すぐ社殿が現れた。

近くにあった御札を頒布する小屋には、2種類の御札が置いてあった。

「八頭龍王大権現」と「龍ヶ窪大神御影」。

一方は、神仏習合の名残りがあり、もう一方は神道中心に受け継いで来たようだ。

直感で「龍ヶ窪大神御影」の御札を一体頂いた。

帰宅してから、わが家の地下水のポンプに一番近い柱に祀っている。

後日、古書で入手した「芦ヶ崎村誌」(大正14年製作、昭和37年複製)によると、龍ヶ窪池について、

西北口より吐出する清水、谷内、岡、立石の飲料潅漑に供し、流末は赤澤、反里、小下里、芦ヶ崎、灰雨の諸部落の用水となる。如何に日を累ぬる旱魃と雖も、依然として一滴を滅せず。

とあった。

竜神にあやかり、豊かな水の恩恵を願うばかりだ。

龍ヶ窪池

神社から散策路の分岐点まで戻り、さらに奥へと進むと突如碧水が現れた。

目の醒めるようなエメラルドグリーンの龍ヶ窪。

水面の下には古い木々が朽ち果てる姿が見えて、それもまた美しい。

池の周りの遊歩道を歩いていくと、角度によって池の表情が大きく変わっていく。

龍田宮

散策路の突き当たりまで到着すると、池の奥は水源地に近いため透明度が極めて高くなる。

その前に小さな社殿があった。

龍田宮と呼ばれ、八大龍王権現を祀っている。

先程の「芦ヶ崎村誌」にも次のように記載されていた。

一小祠を祀る。龍田社と称す。蓋し池を鎮守する水神なり。

まとめ

現地で知った龍ヶ窪だが、朝の新鮮な空気と森林浴のおかげで心身ともにすっきりした。

名水にふさわしいエメラルドグリーンの水面と透明度の高さで、心が洗われる。

2つの地区がそれぞれ違ったスタイルで、龍ヶ窪を御神体に神社を祀っているというのも印象的だった。