道後温泉で3つめの外湯となる「道後温泉別館 飛鳥之湯泉(あすかのゆ)」が新しく建てられました。
飛鳥時代の建築様式をモチーフに、瓦屋根と朱色の壁が目に留まる「新湯」です。
オープン初日は行列
平成29年(2017)9月26日午前7時にオープン。
平成30年秋から道後のシンボルである道後温泉本館が改築修理に入ること(工事中も入浴可)、さらに愛媛県内でまもなく9月30日から国体が始まるためこのタイミングでの新設です。
道後温泉は白鷺が傷めた脚を癒やしているところから発見されたとされています。
神代には大国主命と少彦主命の伝説、飛鳥時代には聖徳太子や斉明天皇が道後の湯に来訪した伝承も残ります。
場所は道後温泉本館から西にまっすぐ徒歩約3分です。
伊予鉄道道後温泉駅から行く場合は、道後温泉商店街に入り、突き当たりにあるコンビニを左に進んだ椿湯の西隣にあります。
建物周辺はまだ工事中の箇所も残る中、午前7時のオープンには行列客で賑わいました。
早い人は早朝4時過ぎには順番待ちで並んでいたそうです。
通りから通路を進むと玄関脇に発券窓口があります。
料金表を見ながら、せっかくだから思い切って2階個室にしようとしたのですが15分待ちとのこと。
時代ですね、タブレットで予約票をもらいました。
呼び出しは携帯電話もOKなので、番号を入力して発券してもらいました。
(建物周辺はまだ工事中で、市花の椿が彩る中庭は12月完成予定)
やっと順番が来ました。
エントランスからロビーを抜けて階段を上がった大広間の受付で個室券を見せると、浴衣を出してくれ個室まで案内してくれます。
愛媛の伝統工芸の粋をこらした豪華な個室
個室休憩室は5つ。
部屋ごとに愛媛の伝統工芸で作られた芸術的なインテリアになっています。
私が案内されたのは「湯桁の間」。
東予(県東部)の西条のだんじり彫刻で古代の道後温泉の入浴スタイルを表現しています。
(道後温泉は湯量が豊富だったため、古代、広い湯池を柱のような木材でざっくりと仕切ってそこに浸かっていました)
新築の部屋は檜の匂いが漂っていてぷんと鼻をくすぐります。
ちなみに浴衣は動物たちをモチーフにしたBEAMSです。
高級感あふれる和風の浴室
さて、個室内で浴衣に着替えてから、1階の大浴場へ向かいます。
浴室内は撮影を控えましたが、脱衣所はこじんまりしていました。
浴室も道後温泉本館や椿湯に比べると小さめですが、雰囲気は日帰り温泉というより高級温泉旅館の大浴場といった落ち着きがありました。
地元の人たちの入浴も考えて、洗い場の数が多く取られているのが特徴です。
近所の味の良く染みたおじいさんと観光客が一緒に湯船に浸かっている光景はシュールでした。
個室に戻ってお茶を一服
お風呂から上がり個室に戻ると天目茶碗と茶菓子を出してくれます。
椿の湯飲みは愛媛の伝統工芸、砥部焼です。
お菓子は2種類から選べますが、柚子餡の椿をモチーフにした饅頭にしました。
さっぱりした甘味のお茶に柚子餡がよく合います。
源泉かけ流しの道後の湯で心身共にさっぱりできました。
飛鳥之湯泉で気づいたこと
飛鳥之湯泉を訪れていくつか気になったことをまとめてみました。
施設全般について
大浴場である1階浴室の大人料金は600円。
建物のクオリティや施設の豪華さ、何より至る所に愛媛の伝統工芸を使った贅沢さから言えば、安い入浴料金だと思います。
松山市が運営しているからこそ実現している低料金だといえるでしょう。
もし民間の日帰り温泉なら800円や1,000円は優にすると感じます。
道後温泉本館との違いでいうと、建物の広さや浴室自体は本館の方が広いです。
浴室について
本館には神の湯と霊の湯の2つがあり、料金によってランク分けされていて個室利用者は入浴客が少なく浴室も立派な霊の湯ですが、飛鳥之湯泉は個室でも一般と同じ大浴場になっています。
飛鳥之湯泉には個室よりさらに豪華な特別浴室もありますが、こちらは個室料金とさらに1組あたり2,000円が掛かるので2人でも5千円を超します。
個室について
個室料金は1,650円でこれは本館とほぼ同料金です。
ただ、利用時間が1時間以内なので本館個室が1時間20分なのに比べるとゆっくり入浴するのには向いていないかも知れません。
脱衣を含めて入浴時間を20分から30分に収めないと、入室時の着替えと個室に戻ってからのお茶休憩が慌ただしいものになってしまうと思います。
あと、今回、飛鳥之湯泉を利用して一番気になったのは、個室利用者が券を持って2階に上がり、大広間の係員に提示するところです。
券を見せてから係員が浴衣を用意してくれるのですが、準備が終わるまで廊下でしばらく立ったまま待たされたのは残念でした。
せっかくお金を払って個室代を払っているのだから本館個室のように個室に案内してから改めて浴衣を用意するか、たとえわずかな時間であっても大広間の中まで入ってもらって畳に座らせて待たせる方がいいのではないかなと感じました。
道後で3つの外湯めぐりもおつなもの
道後温泉は温泉を引いているホテルや旅館に泊まっても、観光客は道後温泉本館に入りにいく人が大半です。
ただ、これまで第2の外湯として椿湯もありましたが、地元の人たちが利用することがほとんどで外湯といえば本館という流れがずっと続いてきました。
平成30年秋からは本館が約7年間の改修工事に入るため、歴史情緒あふれる建物外観を楽しむことはできなくなります。
しかし、本館の浴室は利用できるので、今後は本館、椿湯、そして新設された飛鳥之湯泉の3つを外湯めぐりさせるようなコンセプトも必要かもしれません。
ともかく飛鳥之湯泉は施設内の工芸品を鑑賞するだけでも価値のある道後の新しいスポットだと感じました。