星座のないプラネタリウム

星空

暗闇で目をこらしていると、おもむろに星の輝きが見えてきた。

星たちは、黒いボードに星砂をばらまいたような配置をしている。

「星座ってわかる?」

「オリオン座とかかに座とか?」

「覚えてる?」

「子供の頃に学校で習った程度」

ライトとエンジンを切った途端、ダッシュボードの先が夜へとつながっていく。

「たまにプラネタリウムに行くことがあって、番組の最初に10分ぐらい、その日の星空を解説してくれるんだけど、どうにもすっきりしないんだよね」

「どうして?」

「ただの星空に、古代ギリシャ人だかが勝手に思い込みで星座を作ってしまった感じが」

「言い方キツいけど、まあたしかに」

「星空に白い線で一等星が結ばれていって、星座の骨格ができていく。やがて、おうし座だったら古代のイメージの牛のかたちをした輪郭線が投影されるんだけど。無理矢理すぎる感じがしなくもなくて」

「北斗七星やオリオン座はまだ許せるんだけど、おうし座やかに座なんて、ほんと強引なんだよ」

「わからなくはないけど。でも、当時の人たちは想像力がすごすぎて、そう見えたのかもね」

「だとしても、現代版の星座に作り直してもいい気がするんだよね」

「ぜんぶ?」

「ん?」

「だから、ぜんぶの星座を一つずつ現代人の感覚にあったものにしていくわけ?」

「そのほうがすっきりすると思って」

「星たちはただ輝いているだけなのに、人間の都合で星座にまとめられちゃって。ちょっと失礼すぎる気もしてきたな」