【詩】月の向こう側

いまわたしはどこに立っているのか

あの満月も向こうに回れば暗闇を司る新月
記憶の図書館の中央で昔の記録が飛び交う

いま未来に頭を打って死ぬと
過去が日の出と共に上がる

戸籍に小さな名前だけを刻み
住民票で召し上げられる人頭税の人生

すべてのつながりは〈ヴァーチャル[幻想]〉なのだから

見えない赤い糸は
見える黒い糸にもならないのだから
歯を大切にしようといいながら
抜け落ちた歯にはこれっぽっちも関心がないのだから
落ち葉は捨てられる運命
落ちるまでは
枯れ葉はシャンソンのテーマ
集めて焚き火にされるまでは

人は死ぬときっとゴミになるのだから
人を人のまま人として生かすことはできない

自分だけがただ意味もなく変わっていく者である

もうすべてを支配することはできない

支配するよりも操作することもできない
操作されるシステム自体が消えていくのだから

消えることが正しくて
残ることに正しさが
薄れ
消え
滅する世界が
訪れるのだから

ようやくゴールが見えてきた
ゴールと思い込めばゴールだ
始まりは足元に踏んでいる
前へ行くことも
後ろへ下がることもないから
安心しなさい

ほら
人生の種火も
爆発してしまえば
価値の無い炎になるだろう

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